朝日新聞が書くと
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惇郎のためらい
ベトナム戦争でサイゴンが落ちたとき「米軍が北爆を始めて１０年。長い戦争だった」と深代惇郎（ふかしろじゅんろう）の天声人語にある。
続けて「ベトナム人同士を戦わせるため２年間、戦争を長引かせた」とも書いている。まるで米国に悪意があったみたいに。
確かに悪い国だが、これは言いがかり過ぎる。
米軍が撤退した後も北ベトナム軍が矛（ほこ）を収めなかったのには理由がある。
その答えがサイゴン陥落後にぞろぞろ出てきたボートピープルだ。マレー、オーストラリアへと逃げた計１２０万人の正体は、実は華僑。つまりシナ人だ。
彼らが逃げ出したわけは１９世紀からの仏（フランス）植民地時代にさかのぼらねば判らない。
その時代、フランスは街ごとに徴税事務所とアヘン専売所と刑務所を建て、ベトナム人を働かせ、税金を取り、アヘンを買わせた。逆らったら牢（ろう）につないだ。
アンドレ・ビオリスの「インドシナＳＯＳ」には抵抗する農民に「デボアチンが機銃掃射した」とある。撃たれて死ねば「高い葬式税が取られた」と。
その徴税やアヘン販売を華僑がやっていた。
ハノイの戦争博物館の入り口に風刺画がかかっている。最上階にフランス人がふんぞり返り、彼の足もとに太った華僑が控え、その下にベトナム人官吏がムチを振って最下段の農民たちを酷使している図だ。
華僑は戦後（大東亜戦争）フランス人が追われたあとも居座って役所仕事から交易、金融まで握ってベトナム人の国を壟断（ろうだん）してきた。
米軍が撤退したときベトナム人が望んだのは華僑付きの平和ではなかった。彼らを除去するために誰にも文句を言わせない完全な勝利が必要だった。
それで「余計な２年間の戦争」があった。完勝した北ベトナムはすべての華僑の財産を没収し始めた。
華僑は逃げ出し、シナの体裁を重んじた朝日新聞は「ボートピープルは共産主義が嫌いな人たち」とか誤魔化した。深代もそれにならってヘンな書き方をした。
しかし鄧小平は事実を知っているから、しばらく後にベトナム懲罰の軍事行動を起こした。
ウソの連鎖で朝日はこの中越戦争の理由も誤魔化さねばならなかった。
同じウソの連鎖でベトナムと日本の関係もずっとインチキを書き続けた。
最初の抗仏運動の担い手は日本に留学した東遊運動の子弟たちだが、朝日はそれも書いていない。
その一人、陳中立（チャンチュンラップ）は北部仏印進駐の際、銃撃してきた仏軍ドンダン要塞を瞬時に制圧する日本軍を目撃した。偉そうにしてきた白人が斬られ、残りは泣いて命乞いをしていた。
陳は勇気と武器をもらって決起する。結果は全滅だが、ベトナム人はそれを最初の抗仏戦争と呼ぶ。
大東亜戦争の末期、ハノイを飢餓が襲った。「日本軍陣地で炊き出しがあった」「雑貨店の日本人女将がおにぎりを振舞った。戦後、仏人の店がみな焼かれたがこの店は襲われなかった」と同盟通信の小山特派員が伝える。
抗仏の民兵は日本軍の「イッチニッ」を意味する「モツハイ」と名乗った。
帰ってきた仏軍は（ベトナム人が大恩を感じ絶対に襲わない）日本兵を基地の歩哨に立たせたが、モツハイはその足元を抜けて白人たちを襲った。
「その間、日本兵はただ空を見上げていた」とマウントバッテンは記録する。ベトナム人と日本人が心を通わせていた。互いに命を預け合うほど信頼し合っていたことに感嘆（かんたん）していた。
朝日が「戦後７０年／南方からの視線」でこのベトナムと日本のかかわりを取り上げていた。
ただ中身はハノイの飢餓だけ。
「日本軍がコメを強制買い上げした」（佐々木学記者）ために起きたとウソを書き、日本軍はひどかったとベトナム人に語らせる。
この話は倉田満が「赤でさえ書かないバカ教科書」と評した山川出版の歴史本から引用したと文中にある。
教科書の記述で記事を書く記者がいるのに驚く。まともな資料では日本を貶（おとし）められないからなのか。
朝日新聞は吉田清二の昔から偉そうに「歴史を直視しろ」とか説教してきた。
お前がまずやったら。
（週刊新潮 H28.1.21 「変幻自在」）
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※（ ）は一色誠の追記。
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